ファンタジーは苦手です。

一世を風靡した作品が苦手だ。

青い表紙
透明度の高い光を入れて
アングルはやや下から
登場人物はどこか物憂げに目線を上に
少し長めのタイトル
お涙ちょうだいの、煽り文句

綺麗なファンタジーはファンタジーの中で留まっていてくれと、懇願にも似た声だった。

現実は綺麗じゃない。人が入れ替わることも、タイムスリップすることも、ましてや時間軸の違う人と会うことなんて、ないのだと。


「でも、夢を見るのは良いんじゃない」
庇う義理もない作品たちに思わず同情した
「それは夢じゃなくて、都合のいい想像だよ」


君は白球を追う
四つの季節が移り変わると言われるこの土地で
いつでも、どこでも
白球を追う

球児の高みを指す球場は
夢ではなく目標だと言った
プロの世界も、目標だと
野球に一生関わることは、夢らしい。

君の言葉は難しい
定規を使って直線を引こうとしても
どうしてか斜めになってしまうような

微妙なズレが二人の間にあるんだろう


皺、寄ってる

眉間を人差し指で押す君は笑顔だ
日に焼けて、焼けすぎて荒れた肌が
堪らなくかっこいい

目標の場で輝く君を見たい
できれば、君ほどではないにしても日を受けて輝くアルプススタンドで

今のわたしの、精一杯の夢だけれど
「それは、夢じゃなくて約束だろ」
やっぱり、難しい。


難しいから、「好きだよ」って
とびきりな簡単な言葉ばかり
わたしの口からは飛び出して、溶ける。

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