ひとりごと
センターサークルに寝転がるのが好きだった。
鍵を取りに行くのは部長の役目だったから
週3日の朝練はみんなが集まるよりも早く行って
鍵をさしこみ
キシキシと悲鳴をあげるドアをスライドし
幕袖に荷物を置いてから
そっと、そっと
優しく仰向けになる
真夏は5分で汗を流し
真冬は地下からの冷気に身を震わせ
それでも飽きることなく
ただ、朝の10分間
摩擦の音も
弾むボールも
笑い声も
何もない沈黙の空間で
私はじっと天井を見つめていた
見ていたものは
手を伸ばしても届かないものばかりで
見逃していたものは
ごく近くにあった、何気ない日常
気だるさを訴える
腰に
膝に
足首に
背中に
「あと、少し」
「本当に、少しだから」
そう、ひたすら呼びかけて
耳に入る足音で、ゆっくり身体を起こす
いつからか
視界にゴールが入らなければいいのにと
なぜプレイすることを選んだのかと
でも、それがまぎれもない正解なのだと
焦がれであり
憧れであり
幸せであって
地獄でもあった。
もう少し、あと少し
頑張らなくてもいい
その代わりに
どうか、まだ
壊れないでくれ
吸い付く皮の感触すらも
拭い去りたくて仕方なかった
あの、10分間だけは。
2015.08.27
(久しぶりに見た夢で)
(どうにもこうにも寝付けなかったので)
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