舞台公演の魅力を考える

「俺らは、真面目に練習しています」

忘れていた自分を、ほんの一瞬だけ恨んだ。
そうだ、それが当たり前なのだと。
自分だけは、そのことを忘れてはいけないのだ、とも。

友達が9期として出演していたり、ゼミに8期がいたり、地元にも8期がいたりと。
意外と繋がりがあるSesSion。

大所帯で、不明確にお金がかかるという噂を聞きつけて入るのを諦めた1年生の春。
体験でゴリゴリのヒップホップを知って、密かに憧れを抱いて。
憧憬のみを胸に、座席に腰をかけた。

「ONCE」
レベルの差を見せつけられたといいますか。
なるほどね、と。
ホールってこういうもんだよな、と。

何よりまず、ストーリー性。
ONCE=一期一会
この軸がしっかりしているからこそ、あの公演は誰が見ても楽しめるものになっていたと断言できる。
開演前は「そうは言っても、創作ダンスじゃあるまいし、どうやって表現すんのかねー」って、半信半疑な部分も。
でも。
オープニングで懐疑心なんて吹き飛んだ。


300人超の大所帯がもつ強さを存分に活かしたステージ構成。
早稲田の看板サークルである放研の技術力の高さ。
緻密に練られたストーリー。
そして何より。ダンスの舞台だからこそ尤も大切で、むしろそれだけがあればいい。
スキルの高さ。

もうなんか。
本当に馬鹿みたいにお金が飛んでいくサークルだということは分かっていてもなお、あの舞台を経験できるのならば、かける価値はあるのではないかと、感じてしまうほど。

ヒップホップは2ナンバー。
一個がニュー寄り、もう一個がミドル寄り。
わたしが憧れた、そのままの、ヒップホップ。
強くて、しなやかで、それでいて楽しそうで、刹那の切なさも併せ持つ。

今回は友達に頼まれてカメラも構えていたけれど。
覗き窓に目を近づけることすら、ヒップホップは叶わなかった。

魅入る。
この言葉がぴったり合う、そんなナンバー。
主人公の1人である山本さんの振り付け。
誰も、名前を叫ばない。
ううん。
多分。

あれは叫んじゃいけなかった。
不確かだけど、でも私の中ではしっかりとした確信。
多ければいいってもんじゃない。
迫力は、それなりの代償を払って初めて与えられるもの。
立ち位置がずっと後ろで、辛い想いをし続けた下級生もいたと思う。
思っていた振りと違っていて、乗り切れないダンサーもいたと思う。

それでいて、あの完成度。
追い求めることでしか、あの強さは描けない。
「楽しければ」
そんな甘ったれた考えでは、舞台の大きさに飲み込まれてしまう。
そう、心から感じる。

ライトが消えたときの、静かな歓声が、このナンバーの全てを表していた。

やはりわたしは、バレエあがりの人の踊りが好きだ。
軸がしっかりしていて。
「先」の大切さを知っていて。
表情での魅せ方が自然と身についている。
そんな、「綺麗な」ダンスが好きなんだと。

もう一度思わせてくれた、彼女に最大限の感謝を。
「星空」

唯一、見つけることができるオリオン座のように、すぐに見つけた。
追った先に写る彼女は凛としていて、素直だ。
体調が万全でない中での、あのパフォーマンス。
感服。その一言。

重たさ×重たさ
その答えは、強さ。
もう一度観たい。
それは、「もう一度踊りたい」と願う強さと相関すると思う。

「熱情」
一生、どんなに頑張っても踊りこなすことができないジャンルだから。
わたしも熱のこもった視線で観ることができる。
細さの中の芯の太さ。
可憐な中の本能を。

見事に表現しきった、素敵としか言いようがないナンバー。


一期一会の世界で。
愛別離苦を繰り返す。
その中で、心の平静を保とうとわたしは必死だけれど。
移りゆく波をしっかり表現してあげることも、必要なんだって。


「真面目に」
「練習をする」

言い聞かせては、裏切られた気分に陥って、無視をしては、苛つく心を隠すのに必死になり。
求められたいようで、誰にも干渉されてたくない。
そんな矛盾を抱えている今。

わたしに出来ることは、「真面目に、練習をすること」


踊る世界だから。
踊れてなんぼ。

なんだ。
単純なことじゃないか。
2015.08.30
(Love You, baby)

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