彼の言葉は痺れ毒

「お前が大切にしたいものはなんなの?」
いつも、聞かれること。

びーびー泣いていた中学時代も。
むくれて斜に構えていた高校時代も。
1番のびのびしているが故に厄介ごとに関わっちゃう大学時代も。

いつ相談しても、なにを話題にあげても言われる言葉。

わたしが、大切にしたいもの。

それが誰かにとっても大切にしたいものだったら嬉しいなって思ってたのはちょっと前の話。
今は、大事な人の大切なことを、わたしも大切に思いたい。

でもなんだろう。
目の前は真っ暗だ。
いつもはサラサラと口に出来ることが、今日は全く、どうしようもなく、澱んでしまう。
つっかえてしまう。

口を開かずして、理解してもらうことなんて不可能なのに。
話を聞かずして、理解することなんて無謀なのに。

それを知っていてなお、今は語ることを避けようとしている自分がいる。

認めざるを得ないことが、一つ。
わたしは、傷ついた。
彼の言動に?
彼女の無垢が故の牙に?
多分、どちらも正解であり、間違いでもある。

月日が経ったことによる、自分自身の気持ちの変化が、わたしの身体を切り刻んだ。

昔なら、傷つけられた分、傷つけてやろうって息巻いていたけれど。
もう傷つけたくはない。
疲れたくないから。
見えない悲しみを背負いたくないから。

だから、嫌いになる前に。
牙を研ぎ始める前に。
あなたの前に、立ちはだかる前に。


2015.09.09
(走り出そうとしたわたしを止めるあなたの言葉こそが)
(わたしを揺るがす痺れ毒)

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